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赤緑 Archive

日記

769 :赤緑 ◆kJAS6iN932 :2008/10/05(日) 09:10:06 ID:34cNrvA10

[日記]
1/9
●1985年 2月5日
私は知った。
この世界には神も仏もいない。
いるのは人間のみ。なんて残酷な事実だろう。
希望も何もあったものじゃない。

昨夜、妻の容子が亡くなった。34歳という若さで、だ。
彼女と結婚して15年。2人の子供にも恵まれ、幸せな家庭だった。
それが崩れ去った。
この悲しみはどうすればいいのだろう。

娘の優理は昨夜からずっと泣いていたが、今は疲れて寝てしまった。
暁彦は呆然としていた。かなりのショックを受けてしまったようだ。
私も同じで、涙さえ流れない。私と暁彦の分も、優理が泣いてくれているようだ。

●1985年 2月7日
妻の亡骸を葬ってやらねばならないが、
優理が母親の元から離れようとしない。困ったものだ。

暁彦は部屋に篭ってしまった。食事を持っていくと、何も言わずそれだけは食べてくれる。

私はどうすればいい?

770 :赤緑 ◆kJAS6iN932 :2008/10/05(日) 09:14:28 ID:34cNrvA10

2/9
●1985年 2月9日
優理が眠っている間に、亡骸を庭に埋めた。
このようなことは本来許されないのだろうが、妻を焼却し骨にするなんて私には出来ない。
あの美しい姿のまま・・・土に還って欲しい。

目を覚ました優理が泣き叫んでいたが、母親は天国に行ったのだと説明する。
いつまでも優理のことを見守っているよ、と言うと分かってくれたようだ。
聞き分けの良い子だ・・・が、まだ幼い。きっとまた泣き出してしまうだろう。

暁彦は相変わらずだ。何とかしなければ。
しかし私も気力がない・・・。

●1985年 2月12日
優理の部屋から話し声がしたので入ってみると、
鏡に向かって会話をしていた。
相手は母親、としているようだ。
残酷だが、母親はもうここには居ない、と言うと、やはり泣き出してしまった。

暁彦は部屋から出てくるようになった。・・・が、すっかり無口になってしまった。

771 :赤緑 ◆kJAS6iN932 :2008/10/05(日) 09:22:26 ID:34cNrvA10

3/9
●1985年 2月18日
夜中、優理が突然泣き出すことが多い。
一緒の部屋に寝るようにしているが、父親の私ではやはり母親の代わりは無理だ。
寝不足の日が続く・・・。

●1985年 2月20日
疲れが抜けない。沈んだ気持ちから抜け出せない。
これで自分が倒れたら、子供達が・・・。しっかりしなければ。

●1985年 2月25日
ひたすらに本を読んでいる。
気分を紛らわせなければ、私まで駄目になってしまいそうだ。

優理が人形と遊んでいた。確か妻から貰ったヌイグルミだ。
そんな姿を見ると、私の心は押しつぶされそうになる。

●1985年 3月2日
興味深い本を見つけた。少し没頭してみよう。

無口で愛想の無くなった暁彦を見ると、イライラしてしまう。
自分の責任だろうに、私は駄目な父親だ。

772 :赤緑 ◆kJAS6iN932 :2008/10/05(日) 09:26:31 ID:34cNrvA10

4/9
●1985年 3月8日
この世界には神も仏もいない。
いるのは人間のみ・・・ならば。
人間は、神になれるのではないだろうか。その業を行えるのではないだろうか。

私はこれからの生涯を掛けるべき、目的を見つけた。
子供達のためにも、きっとやり遂げてみせる。

――――――

●1985年 12月5日
あれから8ヶ月。
必要とされるものは、大半揃った。
財産のほとんどをつぎ込んでしまったが、構わない。

計画は、優理に手伝ってもらおう。
まだ幼いながら、母親に似て、優理は美しい。
彼女こそ相応しいだろう・・・。

●1985年 12月25日
世間はクリスマスだ。
去年の幸せな時間を思い出してしまう。
優理は特にそうだろう。今は部屋にいるが、きっと泣いているに違いない・・・。

2人の子供よ。今にきっと、最高のプレゼントをあげるからな。
それまで我慢してくれ・・・。

773 :赤緑 ◆kJAS6iN932 :2008/10/05(日) 09:29:11 ID:34cNrvA10

5/9
●1985年 12月28日
準備が整った。
しかし、まずは実験をしなければ。優理で失敗するわけにはいかない。
実験の相手は決まっている。暁彦だ。
実の兄妹である訳だし、これ以上の実験体は存在しないだろう。

●1986年 1月5日
・・・失敗だ!
やはり無理なのだろうか?それとも何かが足りなかったのか?
しかしここで止めるわけにはいかない・・・。

●1986年 1月28日
突き止めた。これだ。
媒体に問題があったのだ。
しかしこれは、どうすればいい?
今の時代でこれを大量に手に入れるには・・・?
単純な話だ。そこら辺に居る。
優理なら問題なく連れて来てくれるだろう。

●1986年 2月4日
妻が亡くなってから1年。
待っていろよ、容子。

774 :赤緑 ◆kJAS6iN932 :2008/10/05(日) 09:33:07 ID:34cNrvA10

6/9
●1986年 3月5日
優理はよくやってくれている。
身なりを整えたその姿は、我が娘ながら心を奪われる。

それに比べて、暁彦の態度が悪くなってきた。
少し頭がおかしくなっているのかもしれないが、まぁ、問題はない。

●1986年 7月16日
頃合だ。明日だ。明日決行する!

●1986年 7月17日
優理は気付いているだろうか。
自分が、誰もが望んで止まないものを手に入れたということを。

しかし、しばらくは様子を見ることにする。
もし本当に成功なら、この応用で妻を蘇らせるのだ。
暁彦も治してやらなければならない。

775 :赤緑 ◆kJAS6iN932 :2008/10/05(日) 09:36:52 ID:34cNrvA10

7/9
●1987年 7月21日
1年振りか。
優理は美しい姿のまま、1年前と何の変化も見られない。
容子が亡くなってから2年以上経ってしまったが、ついに彼女に会える日がきた。

●1987年 7月22日
なぜだ?
なぜ?なぜだ?なぜなんだ?

あれは容子じゃない。あんなもの、容子じゃない!

●1987年 7月29日
祖父が死んでからずっと空き家になっていた家に、あれを隔離した。
あれをどうやって連れて行くか悩んでいたが、どうやってか、優理が連れて行ってくれた。
しかし、あれは一体なんだったのだろう・・・。

●1987念 7月30日
優理が嬉しいことを言ってくれた。
容子は、その魂は、まだここに居るというのだ。

どうやら私のやり方が間違っていたようだ。
優理は全てを知っているのだろう。
あとは優理に任せるべきか?

776 :赤緑 ◆kJAS6iN932 :2008/10/05(日) 09:39:22 ID:34cNrvA10

8/9
●1987年 8月2日
ここに居るというのに、私は容子に会えない。
優理はその存在を感じているようだが、私にはさっぱり分からない。
会いたい・・・美しかった彼女に、会いたい。

●1987年 8月3日
優理に何とかできないかと頼んでみたが、今はまだ何ともならないと言う。
時間が必要だと言い、それも何年掛かるか分からないと言われた。
頭にきて、思わず優理を叩いてしまった。優理は悲しそうな顔をしていた。

しかし分かって欲しい。
私は今、41だ。容子は34で亡くなった。
今後何年掛かるか知らないが、私はどんどん老いていく。
年齢差は開く一方・・・これには耐えられない。
死人は年を取らないし、優理もまた年を取らない。
暁彦の成長もかなり遅くなっているが、暁彦はいずれ、姿かたちが崩れてしまうだろう。

私もまた優理のようになることを考えたが、暁彦と容子の失敗を見てみると、
その勇気はない。暁彦のようにいずれ崩れる運命になるのは最悪だ。

一番良いのは・・・私も死んでしまうことだろうか?

777 :赤緑 ◆kJAS6iN932 :2008/10/05(日) 09:43:02 ID:34cNrvA10

9/9
●1987年 8月6日
先日考えたことが、まさに正しい道に思えてきた。
私が死んでも、いずれ優理が目覚めさせてくれる。
しかも、死ねばきっと容子に会えるだろう。

死ぬことにした、と優理に話すと、泣き出してしまった。
寂しいから嫌だというが、暁彦がいるだろう。
変わってしまったが、あれでも兄だ。それに私も、ずっとここに居る。
そう言って抱きしめ、頭を撫でてあげると、やっと泣き止んでくれた。
そして優理は諦めたような顔をすると、ヌイグルミを抱えて部屋に戻っていった。

甘えたいのが痛いほど分かる。しかし私はもう限界だった。
いつか、また家族4人で会えたときには、きっと・・・。

死に方は決めている。
また優理が泣いてしまうだろうから、死体は見せる訳にはいかない。
私は毒を飲み、家の焼却炉でこの身を焼こう。

それでは一時の別れだ。
愛する2人の子供、暁彦、優理。

また会う日まで。

――――――――――
〆寺坂 三矢

呪いの業

580 :赤緑 ◆kJAS6iN932 :2008/09/24(水) 09:48:44 ID:8InAxZ8c0

[呪いの業]
1/10
チクチクする。
明美はまた右手首の傷を確認した。
針で刺してしまったところが、ずっとチクチクと痛む。
明美「あの、針・・・変なばい菌でも入ったんじゃないでしょうね」
テレビを消しベッドに座り、一人つぶやく。

傷は小さく、別に深くも無いのに、その周りが痣のように変色している。
そこがチクチクと痛むのだ。
明美「まったく、サイテー・・・」
ラウンジにいたあの女かあのガキか、今度会ったら慰謝料でも請求してやろうか。
どうもイライラしてしょうがない。携帯を取り、彼氏に電話してみる。

明美「あー、幸雄?ちょっと聞いてよー」
幸雄「ん、あぁ、どうした?」
夜も遅い時間だったが、すぐ電話に出てくる。
何でも言うことを聞いてくれるし、何でも買ってくれる。
幸雄は明美にとって自慢の・・・便利な彼氏だった。

581 :赤緑 ◆kJAS6iN932 :2008/09/24(水) 09:52:48 ID:8InAxZ8c0

2/10
明美「ほら、昨日さー、ラウンジで怪我したじゃない?あたし。あの汚いヌイグルミのせいでさー」
幸雄「あ、あぁ、あれな。ひでぇ奴らだったな」
明美「そう。でさぁ、その傷がずっと痛いのよねー。ちょっとさ、明日病院に連れていってくれない?」
幸雄「あ、おう。そんなに痛いのか?」
明美「うん・・・ずっと、すごく痛いの」
ちょっとチクチクする程度だが、すごく痛いといっておこう。

幸雄「そう、か。俺もさ、何かさ、左目がずっと痒いんだよ」
明美「・・・はぁ?」
幸雄「だから、昨日からさ、何か目が痒くてさ」
明美「ちょっと、何?目が痒いのと、針で刺されて酷く痛がってる私と、一緒にしてるわけ?」
幸雄「いや、そんな訳じゃ」
明美「信じらんない。明日、朝早く迎えに来てよね。こっちはすごく痛くて大変なんだから」
幸雄「あ、ああ。うん。分かった。ごめんよ、朝一で行くよ」

明美は携帯を切り、ベッドに横になる。これくらい言っておけばいいか。
そしてそのまま、これをネタに今度何を買って貰おうか、などと考えつつ、寝てしまった。

582 :赤緑 ◆kJAS6iN932 :2008/09/24(水) 09:58:30 ID:8InAxZ8c0

3/10
チクチク・・・じゃない。ウズウズする。
気持ち悪い・・・なにか蠢いているような・・・。
明美は嫌な感じに襲われ、目を覚ました。
体を起こしてベッドに座り、ベッドランプを付け、時計を見る。2:30を過ぎたところだった。
そして眠りを妨げる忌々しい手首を見て、明美は凍りついた。

目だ。
手首の傷が横長に開いて・・・そこから目が覗いている。
瞼もまつ毛もない目がそこにあり、キョロキョロと動き・・・明美と目が合った。

明美は理解出来ず、口を開けたまま、声も出なかった。
ゆっくりと手首を裏返し、ベッドに伏せる。いやな汗が出てきた。
夢・・・だ。きっと悪い夢を見てるんだ。
しかし感覚がある。手首で何かが蠢いている感覚が。気持ち悪い・・・!
明美は助けを求めるように、何があるわけでもない暗い部屋を見渡した。
そこで、別のものを見てしまった。

部屋の隅に誰かいる。
ベッドランプの灯だけではよく見えない。幸雄・・・?と思ったが、そんな訳はない。
誰なの?と言おうとしたところで、更なる異常が始まった。

583 :赤緑 ◆kJAS6iN932 :2008/09/24(水) 10:02:25 ID:8InAxZ8c0

4/10
壁から手が、天井から足が、床から頭が出てきた。
それも少しだけ出てきた、ということではない。
無数の真っ黒な人影が、壁や天井、床から沸いてくるのだ。
大して広くない部屋に、どんどん沸いてくる。
明美は目を見開き、唖然とする。叫び声を上げたいのに、なぜか声が出ない。
何?一体、何?理解できない。頭で、理解が、できない。

人影は増え続け、ベッドの上にも沸いてくる。明美は完全に囲まれてしまった。
しかしそれらは襲い掛かってくる訳でもなく、ただ明美の方を向いて立っている。
顔も黒く、表情は見えない。

明美の頭は混乱し、いよいよその限界を超えそうになったとき、声が聞こえてきた。
クスクスと笑う声。女の子の、笑い声だ。

ふと気付くと、人影の中、明美のすぐ目の前に小さな女の子が立っていた。
真っ白なワンピースを着ている。
ベッドランプだけの薄暗い中でも、その子の姿だけははっきりと見えた。

584 :赤緑 ◆kJAS6iN932 :2008/09/24(水) 10:08:35 ID:8InAxZ8c0

5/10
少女「ねぇ・・・どんな気分?」
少女はクスクスと笑いながら、明美に話しかけてきた。
しかし明美は何も答えることができない。
少女「そっか、もう話せなかったね」
言葉を発せないことを知っているようだ。少女はフフフと妖しく笑う。
それを見て明美は思う・・・なんて・・・綺麗な子だろう。

少女「手首、気持ち悪いでしょ」
少女は明美の手首を持ち、目の前に掲げる。
少女「ほら、これで楽になるよ?」
そう言うと、少女は果物ナイフを明美に差し出した。
確か台所にあった小さな果物ナイフだ。そうだ、これで・・・。
明美は虚ろな表情でそれを受け取り、左手に逆手で持ち、右手首の目に狙いを定める。

ナイフを目に近づけると、明美の頭の中に声が響いた。
「やめてやめてやめてやめて―――――」
明美は思う。いいぞ、こいつ、怖がってる。私に散々嫌な思いをさせて・・・許さない。

585 :赤緑 ◆kJAS6iN932 :2008/09/24(水) 10:14:44 ID:8InAxZ8c0

6/10
明美はナイフを強く握り締めると、手首の目に突き刺した。
その瞬間、頭の中に叫び声が響く。
目から血が噴き出し、涙のように流れていく。
その声を聞いて、明美の口元に笑みが浮かぶ。苦しめ、こいつめ・・・!
さらに力を込め、ナイフを一気に根元まで刺す。
血がますます噴き出すと共に、断末魔の叫び声が頭の中に響いた。
明美の顔に恍惚の笑みが浮かぶ。
やった・・・フフフ、やったんだ・・・アハハ・・・。

そしてそのまま・・・明美は意識を失った。

その様子をじっと見ていた少女は、満足気な笑みを浮かべると、その姿を消した。
それと同時に、部屋中にいた人影も消えていった。

586 :赤緑 ◆kJAS6iN932 :2008/09/24(水) 10:18:57 ID:8InAxZ8c0

7/10
・・・数日後。

明美の死体が友人によって発見される。
死因は、自ら手首を切っての失血死。

それと時を同じくして、明美の交際相手であった幸雄の死体も発見される。
なんらかの刃物で、左目を奥深くまで突き刺された刺殺体であった。

587 :赤緑 ◆kJAS6iN932 :2008/09/24(水) 10:25:44 ID:8InAxZ8c0

8/10
都会の雑踏。
12月のこの時期、昼間から人々は忙しそうに行ったり来たりしている。
私はビルの屋上に座り、膝の上にお友達をのせ、何を考えるでもなく下を眺めていた。

寒い季節だが、私には関係ない。いつでも、お気に入りの・・・ママが作ってくれた、お揃いの白いワンピースを着ていられる。
ママのことを思い出すと、いまだに悲しくなる。もうあれから・・・20年以上経っているのに。

誰かが来た。誰か、と言ってもすぐ分かる。
声「優理、こんなとこで何してるんだ?」
私は振り向かずに答える。
私「兄様、お具合はいかがですか?」
兄様・・・暁彦(あつひこ)はそんな私の言葉を笑い飛ばす。
暁彦「にいさま、か。やめろやめろ、そんな気持ち悪い喋り方。もっと自由に話そうぜ?」
私は振り向き、その姿を見る。
長髪に、黒いジャケット。ピアスに指輪・・・。
私は兄様のそんな格好が嫌いだ。昔は違ったのに・・・すっかり変わってしまった。何もかも。

588 :赤緑 ◆kJAS6iN932 :2008/09/24(水) 10:32:50 ID:8InAxZ8c0

9/10
暁彦「なぁ、この前あの大学の学生2人が死んだの・・・おまえだろ」
私「・・・うん」
暁彦「やっぱりなぁ・・・いやいや、怖いねぇ、優理は」
ニヤニヤと笑っている。そんな表情も嫌いだ。
私はラットを抱え、立ち上がる。
暁彦「ん、今度はどこに行くんだ?」
私「・・・パパとママのところ」
暁彦「そうか。親父とお袋も喜ぶよ、うんうん」
私「・・・・・・」
おやじ、おふくろ・・・。昔は兄様もパパ、ママと呼んでいた。
もう、姿かたちだけでなく、言葉使いも変わってしまった。

暁彦「そうだ、優理」
兄様は立ち去ろうとする私を呼び止める。
暁彦「お前さ、なんでお袋の姓を名乗ってるんだ?源川ってさ」
私「・・・別に、意味なんてない」
暁彦「へぇ・・・。ま、いいけどさ。寺坂の名が泣くぜ?」
私「・・・」

589 :赤緑 ◆kJAS6iN932 :2008/09/24(水) 10:38:43 ID:8InAxZ8c0

10/10
私は姿を消し、その場を立ち去る。
ママの姓を名乗っているのは、意味がある。
ママの事、あの頃の事、まだママが生きていた頃のことを、忘れたくないからだ。
パパも兄様も優しく、幸せだった頃のこと。
そう、毎日が楽しく、幸せだった・・・ママが病気で亡くなるまでは。
あれ以来、パパが何だか怖くなり・・・兄様も変わり、いや変えられ、私も変えられてしまった。

あの頃住んでいた洋館に着く。
パパが亡くなってから今はすっかり廃墟だが、ここは誰にも手を出させない。
私が全部守る、と決めたから。私の大切なものを汚す人間は、誰であろうと容赦しない・・・。

ここにはまだパパとママがいるんだ。
ママは・・・ママの一部は人里離れた一軒家で”生活”していたけど、誰かのせいで存在が消えてしまった。
でもここにはまだ残っている。パパとママは一緒にここに・・・いるんだ。

兄様はバランスが崩れかけていて、もうダメかもしれないけど、私にはいくらでも時間がある。
私がきっと、あの頃の幸せな、暖かな時間を取り戻してみせる。
どんな手を使ってでも、きっと取り戻してみせる・・・。

出会い

516 :赤緑 ◆kJAS6iN932 :2008/09/17(水) 09:28:37 ID:TUAZD5IU0

[出会い]
1/12
時刻は11:00、目覚ましの音で目が覚める。
今日の講義は3限と4限だ。今から準備して、大学行って、お昼食べて・・・うん、バッチリだ。
古乃羽でも捕まえてお昼を一緒に食べようと思い、携帯を取り出すが、止めておく。
そうだ、今はきっと「大事な時期」ね。
古乃羽はなんと、雨月君と付き合い出した。
デートをした、なんて話は聞かないけど、電話とメールでよく連絡を取っているらしい。
古乃羽を取られたようでなんだか寂しい気もするが、仕方ない。
ここは一歩引いて、付き合い始めのこの時期を大切に過ごしてもらおう、という私。
なんて健気なんだろう。今度古乃羽に言って、何か奢らせよう。
雨月君、これで彼女を振ろうものなら許さないんだから・・・。

結局家でお昼を済ませて、大学へ向かうことにした。

517 :赤緑 ◆kJAS6iN932 :2008/09/17(水) 09:32:04 ID:TUAZD5IU0

2/12
キャンパス内を歩いていると、何人かが挨拶をしてくる。
まだ2年だが、我ながら知り合いが多い。
初対面でも普通に話しかけてしまうので、たまに引かれることもあるが、
大抵の人は打ち解けて、親しくしてくれる。
挨拶しつつ歩いていると、普段ここでは見慣れない人がそこにいた。
子供だ。
小さな女の子が道の脇に立っている。なんでこんなところに・・・?

周りを歩いている人も、なんだろう?と首を傾げるが、そのまま通り過ぎて行ってしまう。
まったく・・・。明らかに場違いで、困っているかも知れないのに。
周りの目は無視して、話し掛けてみることにした。

私「ねぇ、どうしたの?誰か探しているの?」
女の子は自分の胸くらいの背の高さ。
中腰になって話し掛けると、女の子が顔を上げ、目が合った。

518 :赤緑 ◆kJAS6iN932 :2008/09/17(水) 09:37:34 ID:TUAZD5IU0

3/12
その瞬間、ハッとした。この子・・・すごく綺麗だ。
ただ可愛いだけじゃなく、美人だ。軽くだがお化粧もしているみたいで、魅力的な顔をしている。

女の子「・・・」
女の子は何も答えず、少し首を傾げ、大きな目でじっとこちらを見つめてくる。
白い肌に真っ白なワンピース。どことなく良い香りもする。
この子は将来、どんな女性になるだろう。末恐ろしいというかなんというか・・・。
今のままでも、そこら辺の男だったらイチコロかもしれない。変な趣味が無くても。

私「私、美加、って言うの。あなたは何ていうお名前?」
しゃがみ込んで女の子より目線を下にする。
女の子は答えてくれた。

女の子「わたし、優理」
私「ゆうりちゃん、ね。可愛いお名前ね」
優理「ありがとう」
ニッコリ微笑んでお礼を言ってくる。
なんて可愛いのだろう。思わず抱きしめたくなる。

519 :赤緑 ◆kJAS6iN932 :2008/09/17(水) 09:46:47 ID:TUAZD5IU0

4/12
私「誰かを探しているのかな?それとも、誰かを待っているの?」
優理「・・・・・・」
答えず、ただじっとこちらを見つめてくる。
困ったな・・・あ、そうだ。
私「ゆうりちゃん、上のお名前は何ていうの?」
優理「・・・・・・源川」

みなかわ、か。知り合いには居ない。後で事務にでも行って探してもらおうかな。
本来なら講義の始まる時間だが、今日はパスだ。今はこの子を一人にしておけない。
私「ゆうりちゃん、ここで誰か待っているんじゃなければ、お姉ちゃんとお茶飲みに行かない?」

言ってから気付いた。お茶って・・・。この子くらいの年齢ならジュースで誘うべきだ。
それに何かこれって・・・誘拐とか思われそう。
優理「うん!行くー」

こちらの思いとは関係なく、いい返事が返ってきた。
ラウンジに行こう、と私が手を伸ばすと、彼女は軽く握り返してくれた。
なぜか冷たいイメージがあったが、普通の暖かい、小さな手だった。

520 :赤緑 ◆kJAS6iN932 :2008/09/17(水) 09:51:24 ID:TUAZD5IU0

5/12
構内のラウンジに着き、オレンジジュースを2つ買って席に座った。
少女は向かい合って座って、嬉しそうにジュースを飲んでおり、
カバンに常備しているスナック菓子を出したら喜んで食べてくれた。
名前はどんな字を書くのか聞いてみると、「源川 優理」と綺麗な字で私の手帳に書いてくれ、年齢を聞くと、9歳だと教えてくれた。
私もフルネームを教える。
「神尾美加」。上から読んでも下から読んでも、カミオミカ、というと、面白そうに笑ってくれた。

どこかの教授の子供かと思い、聞いてみる。
私「優理ちゃん、パパかママと一緒に来たの?」
優理「・・・優理ね、パパもママもいないの」
うわ、しまった。いきなり失敗だ。
私「あぁ・・・ごめんね。変なこと聞いちゃった」
優理「ううん。平気だよ」

じゃあ、ここには何で来たのだろう?兄か姉でもいるのかな?と思ったが、
これ以上肉親関係で質問するのはどうも気まずい。
優理「お姉ちゃん、あのね・・・」
私「なぁに?おかわり?」
優理「んーん、だいじょうぶ。ありがとう。あのね、優理のお友達になってくれる?」
うーん、なんて可愛いいのだろう。礼儀正しいし、育ちが良いのだろうか。
私「もちろん。私も優理ちゃんのお友達になりたいな」
と言うと、優理ちゃんの顔がパッと明るくなり、最高の笑顔を見せてくれた。

521 :赤緑 ◆kJAS6iN932 :2008/09/17(水) 09:56:26 ID:TUAZD5IU0

6/12
優理「嬉しい!よろしくね、お姉ちゃん」
私「こちらこそ、優理ちゃん」
こちらまで笑顔になる。いいなぁ、この子。

優理「お姉ちゃんに、私の一番のお友達、紹介するね」
優理ちゃんはそう言うと、手に持っていた熊のヌイグルミを見せてくれ・・・あれ?
手に・・・持っていたっけ?さっきまで手ぶらだったような・・・?

優理「この子ね、ラットって言うの。男の子よ。挨拶しなさい、ラット」
優理ちゃんはヌイグルミの頭をペコリと下げる。
ラット、って確かネズミだったような気もするけど、まぁいいか。
それと、ラットと聞いて頭に浮かんだフレーズは、何故か「解剖」だった。ヤダヤダ・・・。

私「よろしくね、ラット君。優理ちゃん、可愛いお友達がいるのね」
優理「うん。この子ね、ママがくれたの」
今は亡き母親の、形見のヌイグルミ・・・なんだかウルッときた。
私「そうなんだー。すごく可愛いね」
よく見てみると、確かに可愛い。全長30センチくらいの熊のヌイグルミ。
洋服はお手製だろうか?毛並みもきちんとお手入れがされているようだ。

522 :赤緑 ◆kJAS6iN932 :2008/09/17(水) 10:04:43 ID:TUAZD5IU0

7/12
それからしばらく、ラット君のお家のお話や、お国(どこかの王子様らしい)の話となった。
微笑ましい、とはまさにこのことだろうな。

しかしそんな時間を邪魔する2人組がやってきた。

女「きゃーー、なにそれーーーかわいいーーー」
ラウンジに来たカップル。その女性の方がヌイグルミを見つけ、大きな声を出して近づいてきた。
別にそれだけなら構わないのだが、その子はテーブルの上に座ってお菓子を食べていた(設定の)ラット君を勝手に持ち上げ、抱きかかえた。

私「あ、こら、ちょっと・・・」
女「ねぇ~これ、これ欲しいー買って~」
相手の男に向かって謎のおねだりをしている。売り物じゃないっての。
男「んー、熊かぁ、いいね~」
男は優理ちゃんを見つけ、交渉してくる。

男「これ、君のかな?ちょっとさ、売ってくれない?2000円出すよ」
優理「・・・私の大事なお友達なの」
男「じゃ、3000円でどう?子供には大金だろ?あんまりケチるなって、な」
優理「・・・・・・」
先ほどまでニコニコしていた優理ちゃんの顔が曇る。
頭にきた。ガツンと言ってやろうと思い席を立・・・と、そのとき。

523 :赤緑 ◆kJAS6iN932 :2008/09/17(水) 10:10:46 ID:TUAZD5IU0

8/12
女「いたっ!」
ヌイグルミを抱えていた女の子が声を上げて、ラット君を床に落としてしまった。
見ると、女の子の手から少し血が滲んでいる。
女「いったぁ~・・・ちょっとー、針出てたわよ!?」
優理ちゃんは急いで椅子を降り、落ちたラット君を抱きかかえて、また椅子に戻ってくる。
女「検針もしてないの?いらない!そんな不良品」
男「おいおい、これで金取ろうって、信じられねぇな」
ムカッ

私「誰も売るなんて言ってないでしょ?勝手に取り上げて、そんな言い方しないでよ!」
女「何よ、うるさいわね。いいよ、もう、いこ?」
男「ん、あぁ。まったく、詐欺かよ」
一体どういう頭の構造なのか・・・怒りを通り越して、嘆かわしい。
去っていったおバカ2人は放っておいて、優理ちゃんを慰めないと。

私「優理ちゃん、気にしないでね。あんなの・・・」
優理「うん、大丈夫・・・。お姉ちゃん、ありがとう」
優理ちゃんは落とされたラット君の埃を払い、身だしなみを整えていた。
出ていた、という針が気になったが、優理ちゃんは平気みたいだ。

やがて綺麗になったラット君を見つめ、優理ちゃんはしばらく何事か考えているようだったが、突然こう言ってきた。
優理「お姉ちゃん、あのね・・・」
私「なぁに?」
優理「優理のお家に、遊びに来てくれない?」

524 :赤緑 ◆kJAS6iN932 :2008/09/17(水) 10:20:05 ID:TUAZD5IU0

9/12
私「え・・・」
いきなりのお誘い。優理ちゃんは私をじっと見つめてくる。
優理「お家に、来て・・・ね?」
見つめてくる・・・なんて綺麗な目だろう。吸い込まれそうだ・・・。
私「・・・うん」
断る理由なんてあるだろうか。こんな可愛い子の誘いを断るなんて。
優理ちゃんは嬉しそうに微笑んだ。なんて愛くるしい笑顔だろう。

私は席を立ち、手を引かれて歩き出す。手・・・優理ちゃんの手は冷たく、とても大きく感じる。
なんだろうこの感じ・・・。周りの景色が霞んでいき、ぼやけてくる。

子供に手を引かれる女子大生。少しおかしな構図だけど、誰もこちらを見ない。
自分の存在が希薄で、まるでここには居ないかのよう・・・。

ふわふわ、と・・・このまま着いていけば、いいのかな・・・

どこまでも・・・一緒に・・・

・・・・・・

・・・

525 :赤緑 ◆kJAS6iN932 :2008/09/17(水) 10:39:04 ID:TUAZD5IU0

10/12
声「美加!」
私「・・・ん」

声「どこにいくの?美加!」
私「・・・ん?」
ハッと気付く、と・・・そこはラウンジを出たところだった。
声の主は・・・古乃羽だ。

私「あれ、古乃羽・・・おはよう」
古乃羽「おはよう、って・・・今何していたの?一人?」
私「ん?一人じゃないよ?ねぇ、優理ちゃん・・・あれ?」
優理ちゃんが居ない。

古乃羽「ゆうりちゃん、って誰?」
私「今まで中で一緒に・・・」
辺りを見渡しても居ない。と、ラウンジの中を見てみる。
さっきまで座っていたテーブルに、ジュースのグラスが2つ。確かに居たんだ。
お手洗いにでも行ったのかな・・・?

古乃羽「もう・・・大丈夫?寝ぼけてない?また講義サボったでしょ」
私「あー・・・バレタ?」
古乃羽「・・・もう。私、4限あるから行くね。美加もちゃんと出ないとダメだよ?」
そうか、もう4限が始まる時間か。
私「あい、古乃羽の仰るとおり、ちゃんと勉学に励みます」
古乃羽「一緒に進級できないと、イヤだからね・・・?」
私「うん。分かった、ごめん。ちゃんと出るよ」

526 :赤緑 ◆kJAS6iN932 :2008/09/17(水) 10:48:20 ID:TUAZD5IU0

11/12
がんばってね、と言って古乃羽は次の教室に向かっていった。
えーっと、私はどこだったっけな・・・?頭が少しボーっとする。

優理「お姉ちゃん」
私「わっ・・・、優理ちゃん。どこ行ってたの?」
突然優理ちゃんが現れた。
優理「今の女の人、お姉ちゃんのお友達?」
私「うん、古乃羽って言うの。とーっても良い子よ」
優理「ふーん・・・」
優理ちゃんは古乃羽の後姿を目で追っている。

優理「変わった人だね」
私「ん?そう、分かる?私の昔からの、大好きなお友達よ」
優理「見えるんだ・・・」
私「見える・・・?」
優理「・・・・・・」

優理ちゃんは何か考えているようだ。
優理「お姉ちゃん、これ、あげる」
そう言うと、私の手に何かを渡してくれた。それは小さい、綺麗な石の付いたキーホルダーだった。
優理「それね、翡翠(ヒスイ)って言うの」
私「へぇ・・・翡翠かぁ。綺麗ね。これ、私にくれるの?」
優理「うん。お友達のしるし」
私「ありがとう、大事にするね」
っと、ただ貰うだけじゃ何なので、私も何かあげることにする。

527 :赤緑 ◆kJAS6iN932 :2008/09/17(水) 10:59:30 ID:TUAZD5IU0

12/12
確か、あれが・・・カバンを探って・・・あった。
私「じゃあ、優理ちゃんにはこれ、あげるね」
優理「?」
彼女の手にそれを渡す。
中学のときに買った、ペンギンの付いた小さなキーホルダー。
お気に入りでずっと使っていたやつだ。大切に持っていたので、目立った汚れも無い。
優理「わぁ・・・可愛い!」
私「ふふーん、そうでしょう。ペンギンさん、可愛がってあげてね」
優理「ありがとう!ペンギンさん、よろしくね」
優理ちゃんはそう言うと、ニッコリ微笑んだ。

優理「優理、もう帰るね。お姉ちゃん、お勉強するんでしょ?」
私「あ、うん。ごめんね、もっと遊んでいたいんだけど」
優理「ううん。楽しかった。ジュースとお菓子、ごちそうさまでした」
ペコリと頭を下げる。
私「いえいえ。じゃあね、優理ちゃん、またね。ラット君もまた会いましょう」
私は優理ちゃんとラット君に手を振る。
優理「うん。また会いにくるね。バイバイ、お姉ちゃん」

そう言って手を振ると、優理ちゃんは大学の正門の方に駆けていった。
あれ?結局、何をしに来たんだろう・・・
ただ構内に入って来ちゃっただけだったのかな?

ふと腕時計を見ると、4限開始の時間だった。
私は優理ちゃんに貰ったキーホルダーをカバンに入れ、急いで教室に向かった。

一度、正門の方を振り返ってみたが、優理ちゃんの姿はすでに無かった。

連鎖

436 :赤緑 ◆kJAS6iN932 :2008/09/11(木) 09:33:59 ID:ypIINElh0

[連鎖]
1/9
すっかりハマッテしまった。
いつでも考えてしまう。まるで乙女だな、と思う。
俺は読んでいたオカルト系雑誌を脇にどけ、携帯を取り出し、考える。
メールをするか、電話をするか・・・。ここは慎重に事を運びたい。

ハマッタのはオカルトの世界に、という訳ではない。
まぁそれにも大分のめり込んでいるのだが・・・。
すっかり惚れてしまったのだ。彼女に。
オカルト系雑誌なんかを読むようになったのも、彼女の趣味がそれだからだ。

相手の趣味に合わせて、その勉強?をするなんて、なんて健気なのだろう。
・・・とかなんとか自分に酔っていると、持っている携帯がいきなり鳴った。

慌てて確認し、驚く。・・・彼女からだ!
なんという奇跡。思いが通じたのか?
おぉ、神様、仏様、阿弥陀如来様。
えーっとあと、インドラ様に薬師如来様。刺抜き地蔵様も入れておこうか。

437 :赤緑 ◆kJAS6iN932 :2008/09/11(木) 09:36:20 ID:ypIINElh0

2/9
とりあえず思いついた有難そうなものに感謝して、俺は電話に出た。
俺「はい、北上です」
携帯なのに思わず名乗ってしまった。
声「あー、北上。神尾だけど。今、ちょっといい?」
ちょっとじゃなくて、いくらでもいい。なんて軽口を言いそうになったが、
止めておいた。あぁ、俺、本気なんだな、と思う。
そしてなぜか正座していることに気付く。

俺「おう、平気平気。丁度暇してたとこだ」
神尾「ちょっと、お願いがあるんだけど・・・」

お願い・・・。お願いだって?
彼女が、俺にお願いしたいことがあるって?
これは夢なのか?俺は仁王様と恵比寿様に感謝した。
俺「な、何?」
神尾「あのさ、―――・・・」

438 :赤緑 ◆kJAS6iN932 :2008/09/11(木) 09:40:16 ID:ypIINElh0

3/9
その日の夜。
俺は雨月と一緒に神尾さんの家に来ていた。
家には既に鮎川さんが来ており、以前行った肝試しメンバーが集まったことになる。

神尾さんの部屋は1Kのよくあるタイプ。
綺麗に片付いており、4人集まっても狭さを感じない。
そして物凄くいい香りがするのは、気のせいではないだろう。
さすが俺の天使の部屋だ。うん。俺、キモイな。

しかしこんな急展開があるなんて。さすが恵比寿様だ。
それと、俺は雨月にも感謝した。やはり持つべきものは友だ。
というのも、神尾さんのお願いはこうだった。
「古乃羽が雨月くんに興味があるみたいだから、連れてきて」

こんなやつでよかったら、どこにでも連れて行く。
しかし、鮎川さんが雨月を、ねぇ・・・。上手くいけばいいが、俺は一抹の不安を感じる。
なにしろ、雨月は・・・姉好きだ。
それに対して鮎川さんは、どちらかというと妹属性だろう。
これは中々難しそうにも思える。

439 :赤緑 ◆kJAS6iN932 :2008/09/11(木) 09:45:26 ID:ypIINElh0

4/9
しかし、確か雨月の姉好きは、姉を守りたい一心から来ているようなことを、以前聞いた覚えがある。
詳しくは教えてくれなかったが、病気をしていたからだとかなんとか。
よって、鮎川さんのように見るからに守りたくなるような女の子なら、
望みはあるだろう、なんてのが俺の考えだ。

集まった表向きの目的は、みんなで鍋でも囲んで・・・オカルト話でもしよう、というものだった。
9月終わりのこの季節、鍋はまだ早い気もしたが、
人が集まって食べるものと言えば、鍋でしょう、と神尾さんが言っていた。無論、異議なし。
オカルト話ってのもどうなんだろう、と一瞬、ほんの一瞬だけ思ったが、鮎川さんの得意分野ってことで、これも異議なし。
間違いなく、俺は尻に敷かれるタイプだろうな。まぁ、それでもいいか。

4人が集まったところで、早速鍋を囲む。神尾さんと鮎川さんで作ったらしいが、
鮎川さん曰く、「美加は食器並べていただけでしょ」と言う。
鮎川さんは他の3人に配膳をしてくれる。これは雨月にとってもポイントが高いだろう。
一方、神尾さんは男2人と同様、食べるだけの係り。いいのさ。俺はそんな神尾さんに惹かれるんだ。

440 :赤緑 ◆kJAS6iN932 :2008/09/11(木) 09:53:07 ID:ypIINElh0

5/9
食事も終わり、だいぶ打ち解けてきたところで、神尾さんが、ちょっとオカルトな話があるという。
神尾「バイト先の先輩に聞いた話なんだけどね。ほら、先日××区で通り魔事件あったでしょ?」
確か、仕事帰りのサラリーマンがナイフで刺されて死亡した事件だ。
通り魔の犯行、ということで、犯人が捕まったという話はまだ聞いていない。

神尾「その事件の前から、同じ区とか、近辺の区で同様の事件が起きているのは知っているよね?どれも犯人は捕まっていないの。
これらの事件には共通してることがあって、どの事件も、現場に犯行に使ったナイフが残されているの。
で、そのナイフには犯人のものと思われる指紋がくっきり残っていて、
どれも違う指紋だから、犯人はそれぞれ違う人物だ、って言われているわ」
そうなのだ。
そういった事件だと、犯人が同一の人物である、と報道されると、不謹慎だが少しホッとする。
全て犯人が異なっているとしたら、それだけ危険人物が多いからだ。
でも今回はまさにそれで、まったく物騒な話だ。

神尾「でもね、その指紋の話なんだけど、おかしなことがあったんだって」

441 :赤緑 ◆kJAS6iN932 :2008/09/11(木) 09:58:43 ID:ypIINElh0

6/9
神尾「この前の事件と合わせて、あの地域だと4件も通り魔事件が起きていて、
それぞれの被害者を、古いほうから順にA、B、C、Dさんとするね。
で、この前のDさんの事件現場に残されていたナイフの指紋を照合したら、
一致する人が見つかったらしいの」
俺「あ、じゃあ犯人は特定できたんだ」
神尾「うん、でもそれがね、Cさんの指紋だったらしいの」
俺「ん・・・?」

神尾「でね、それに気付いた人が、なんとなく他のナイフも調べてみたんだって。
そうしたら、Cさんを刺したナイフにはBさんの、Bさんを刺したナイフにはAさんの指紋があったの」

オカルトだ。なるほど、これはオカルトな話だ。
鮎川「それ、逆じゃないの?逆なら話は分かるのだけど・・・」
確かに逆ならありえる。AさんをBさんが刺し、そのBさんをCさんが刺し・・・ならば。
神尾「私も確認したのだけど、違うんだって。
指紋だけ見ると、DさんをCさんが刺し、CさんがBさんを、BさんをAさんが刺したことになるのよ」

442 :赤緑 ◆kJAS6iN932 :2008/09/11(木) 10:03:35 ID:ypIINElh0

7/9
雨月「なんか、不気味な話だね・・・」
俺「本当なのかな・・・それ。ニュースでも言ってないし、そもそも指紋のことなんて、その先輩が何で知っているんだろ」
神尾「うーん、それは私も思ったのだけど、先輩の知り合いで警察の関係者がいて、その人から聞いた、って言っていたよ」
眉唾ものだが・・・まぁ、そこら辺を突っ込むのは無粋ってもんだ。

鮎川「それだとさ。じゃあ、Aさんを刺したナイフの指紋の主は誰なのかな?」
鮎川さんが疑問を投げかける。
雨月「なんか、話の感じだと・・・Dさん、とか?」
神尾「それも聞いてみた。Dさんなの?って。でも違うって。それは誰だか、まだ分からないみたい」

雨月「なんか、奇妙な連鎖が起きているとしたら、始まりはどこなのか、って大事だよね」
鮎川「そう、連鎖、よね。殺された人の怨みが、次の人を殺しているような感じ・・・」
俺「じゃあ、次はDさんの指紋がついたナイフが、誰かを・・・?」
Dさんの怨みが篭ったナイフが次の犠牲者を求めて彷徨う絵が頭に浮かび、ゾッとした。

443 :赤緑 ◆kJAS6iN932 :2008/09/11(木) 10:09:23 ID:ypIINElh0

8/9
雨月「あのさ、ナイフって、全部同じ型だったりするのかな」
雨月が神尾さんに質問する。
神尾「違うみたい」
雨月「被害者の、刺された箇所とかは・・・知っている?」
神尾「えーっと・・・、Dさんはお腹に数ヶ所と、頸部だっけ。あとは知らないや。調べれば分かると思うけど」
俺「気になることでもあるのか?」
雨月「いや…ただ何となく。何か他の共通項はあるのかな、ってさ」
神尾「警察も調べているだろうけど、被害者同士の接点とか、ほとんど無いみたいね」
雨月「そっかぁ・・・」

俺「なんにせよ、物騒な事件だよな。神尾さんも鮎川さんも、気をつけてな」
神尾「親にも言われたわ。夜道の一人歩きはしばらくしないように、って」
鮎川「私も実家から電話掛かってきたな・・・」

その後は、それぞれの実家の話やらで時間が過ぎ、その会はお開きになった。

鮎川さんは神尾さんの家に泊まるらしく、俺たち男2人はそれぞれ家路についた。
もちろん、またどこか遊びに行こう、という約束を取り付けてからの帰宅だ。

444 :赤緑 ◆kJAS6iN932 :2008/09/11(木) 10:13:14 ID:ypIINElh0

9/9
家に帰った俺は、先ほど話題になった事件のことを少し考えてみた。
指紋のことは確かに驚きだが、100%ありえないことではない。
何らかの形で、生前に触ったナイフが使われた、というだけのことだ。
まぁ、0.1%くらいはありえる・・・かな?

俺「ナイフか・・・」
Dの指紋が付いたナイフ。今はどこかに落ちているのか、それとも誰かの手の内にあるのか。

もしも・・・と思う。
霊感のまったく無い(と思う)俺と違って、雨月だったら、
そんな怪しいナイフに遭遇した場合、何か助かる術があるのかもしれない。
鮎川さんもそうだ。彼女も廃校で何かを見た人だ。彼女も霊感持ちなのだろうか。
神尾さんは?違うだろうな。違っていて欲しい。俺と一緒であって欲しいと思う。

この4人の中で、俺と神尾さんは何も見れないし、感じることもできない。
そう思うと不安になる。ドラマや映画だと・・・真っ先に災難に遭うキャラだ。
主人公は雨月と鮎川さんの二人。

俺「ハァ・・・」
だったら、自分の身は自分で守らなければならない。
彼女・・・神尾さんも守ってやらなければ。

新たな決意に燃えた俺は、取り敢えず筋トレから始めたのだった。

視線(後)

300 :赤緑 ◆kJAS6iN932 :2008/09/04(木) 09:10:47 ID:tHmnyYdo0

[視線(後)]
1/11
部屋の扉をノックする。
思った通り、返事はない。確実に中に居るはずなのに。
扉に手を掛けて、開けてみる。
扉は、これも思った通り、開く。
中に明かりは点いていない。これも思った通り・・・

罠に掛かったウサギ。それが今の私だろう。
中には狼が居て、私はきっと・・・
いや、考えちゃいけない。それも思った通りになりそうだから。
今は別のことを考えよう。見ない。見ないようにする。目を見ない。

部屋の中に入る。扉は閉めるべきだろうか。
常識で言えば、閉めるべきだろう。明かりが無いといっても、昼間だ。
部屋の中は真っ暗な訳じゃない。窓から光が差し込んでいる。
私は少し迷ってから、扉を閉めた。
これもきっと、間違った選択なのかな、と客観的に考えてしまう。

301 :赤緑 ◆kJAS6iN932 :2008/09/04(木) 09:12:44 ID:tHmnyYdo0

2/11
中に入ったものの、部屋の正面は見ないようにした。
なぜかは、単純明快。正面にあの男が居るのが分かったからだ。
胸の前で鞄を抱くようにして、手元をじっと見つめていることにした。

私「あの・・・」
問いかける私にかぶせるように、前から声がした。
男「やぁ、鮎川さん。何か用?」
普通の人の声だ。朝聞いたのと同じ声。

私「あ、すいません。勝手に入って。あの・・・美加が、神尾さんが、来ました」
しどろもどろに私は告げる。
男「へぇ・・・それを言いにわざわざ?」
ニヤニヤしたような声が聞こえる。
私「はい、えっと・・・それだけです。探している人がいる、って伝えておきました」

302 :赤緑 ◆kJAS6iN932 :2008/09/04(木) 09:14:25 ID:tHmnyYdo0

3/11
男「あ、そう・・・」
男が近寄ってくるような気配がした。
私「じゃあ、私、これで・・・」
男「ちょっと待ってよ」
きた。どうする?走って逃げるか?ダメだ。それじゃ入ってきた意味がない。
このモヤモヤする感じを、なんとかしたい。この男が何者なのか、はっきりさせたい。

男「あのさ・・・もう、分かっているのでしょ?鮎川さん」
私「・・・なんでしょう」
男が目の前まで来た。私は手元を見続ける。
男「・・・何を、だろうね。どこまで分かっているのかな?この子は・・・」
まただ。ジロジロとこちらを見ている。この視線が嫌だ。

男「こっち、見ないね。分かっているからだよね」
私「だから・・・なんでしょう」
少し語気を強めて言ってみる。

男「俺はさ。神尾なんて奴知らないし、あんたと会うのも今日が初めてだよ」

303 :赤緑 ◆kJAS6iN932 :2008/09/04(木) 09:16:54 ID:tHmnyYdo0

4/11
美加のことを知らない。予想通りだ。でも、私と会うのも初めて?
男「あんたは知っているんだろ?俺のことをさ」
知っている・・・気はした。でもなんだろう。いつ会った?覚えていない。
男「俺の顔、分かる?どう見えている?」

何のことだろう。顔は思い出せないのに。
想像した、悪魔の顔のことを言っている?
でも違う。あれはオカルト本の挿絵がイメージと重なっただけだ。
それとは別に、顔があるの?

男「ちっ・・・何も言わないんだな」
不機嫌そうだ。イライラしている。いけない、何か言わないと・・・
私「あの・・・」
男「ん?」
私「顔とか・・・分からない、です。よく・・・思い出せなくて」
男「じゃあ、顔をあげて見てみろよ。それともこっちから覗き込んでやろうか?」

304 :赤緑 ◆kJAS6iN932 :2008/09/04(木) 09:18:52 ID:tHmnyYdo0

5/11
だんだんと乱暴な口調になっている。
私は怖いのを必死で我慢した。
私「いえ・・・いい、です。もう、その・・・」
男「もう、見るんじゃねえぞ?」
私「え?」
見ろ、とか、見るな、とか。何を言っているの?どっちなの?
男「俺のこと、霊視するなって言ってるんだよ。分かってるんだろ?」

・・・?咄嗟のことで、私は顔を上げそうになり、慌てて押し止まる。
霊視?何のこと?そんなことした覚えもなければ、出来るわけもない。
男「俺は、邪魔するやつは許さないぜ・・・?」
そう言って、ますます視線は強くなる。
まるで、目だけが私に迫ってくるような、そんな感じがする。

男「へぇ・・・。意外と可愛い顔してるじゃない」
耐え難い、不快な視線・・・なんだろう。よくある好奇の目じゃない。
まるでこちらの全てを射抜くような視線。

305 :赤緑 ◆kJAS6iN932 :2008/09/04(木) 09:21:02 ID:tHmnyYdo0

6/11
男「とにかく、だ。」
男は少し離れる。それと同時に視線も離れた。私はホッとする。
男「二度と、俺を見るな。いいな?分かったか?」
何を分かれと言うのか。さっぱり分からない。

男「分かったか、って言ってるんだよ!はい、か、いいえ、だろ!?」
急に怒鳴るような声で私を問い詰めてくる。
私「・・・は、はい」
意味は分からないが、消え入りそうな声で答える。
男「よし・・・それじゃ、帰りな。こんなところにいたら、危ないぜ?」
不気味に優しい口調になる。しかし暗に感じる嘲笑。
きっと笑っているのだろう。私を。

しかし私にはそれ以上何も出来ず、後ろ手で扉を開け、何も言わず外へ出た。
出る瞬間はっきりと、勝ち誇ったような、あざ笑うような声が聞こえた。

306 :赤緑 ◆kJAS6iN932 :2008/09/04(木) 09:23:32 ID:tHmnyYdo0

7/11
外に出た私は、校舎の方へフラフラと歩いていく。

涙が溢れてきた。
怖かったからではない。悔しかったからだ。
部屋に入る前の決意。正体をはっきりさせてやる、と思った決意は、簡単に崩れ去った。
そして意味の分からないことを約束させられ、笑われ、部屋を追い出された。

いや、追い出されたのではない。逃げたのだ、私は。
それが悔しい。
無力で、臆病で・・・言いなりになってしまう自分。
昔からずっと変わらない・・・。変わりたいのに。

校舎の陰に着いた私は、しゃがみ込んでしまった。
もう立つのも嫌だ。私は泣き続けた。

307 :赤緑 ◆kJAS6iN932 :2008/09/04(木) 09:25:05 ID:tHmnyYdo0

8/11
・・・どれくらい時間が経ったか。チャイムの音が聞こえる。
涙は止まっていた。
しゃがみ込んだままの私は、何を見るでもなく、泣き腫らした目で構内を見渡す。
向かいの、図書室のある校舎。講義が終わったので、何人かの人がぞろぞろと出てくるのが見える。
その中に、あの人がいた。雨月君だ。
駆けていって声を掛け、話を聞いてもらおうかと思ったが・・・やめておいた。
こんな状態で話なんてできないし、何より泣いて腫れぼったくなっている、こんな顔を見られたくない。

彼の姿を目で追う。
そして、ふと思う・・・彼は、私を変えてくれるだろうか、と。
変えてくれる。そんな気がする。
いや、変わるのはもちろん自分だ。彼はきっと、そのきっかけを与えてくれる。
そう思える。そんな、ビジョンが見える。

すると不意に、不思議な感覚に襲われた。
私は彼を目で追っていただけだが、いつの間にか、そこに別のものを見ていた。
イメージが頭に浮かんでくる。彼の姿。そしてその後ろにあるもの。
光り輝く、暖かい存在。力強いその鼓動・・・。

308 :赤緑 ◆kJAS6iN932 :2008/09/04(木) 09:28:01 ID:tHmnyYdo0

9/11
私は思い出す。
あの男の言っていたこと。私は霊視をしている、と言っていた。
あれは、こういうことなの?だとしたら・・・
だとしたら、そうだ。これは私の力ではないか。

心の奥に火が灯る。
あいつはミスを犯したんだ。
私は知らなかった。あいつが教えてくれたんだ。気付かせてくれたんだ。
私は何かを見ることができる、ということを。

ならば、私はこれを信じよう。
私の目に見えたものを、信じよう。

309 :赤緑 ◆kJAS6iN932 :2008/09/04(木) 09:29:13 ID:tHmnyYdo0

10/11
鞄から携帯を取り出し、美加に電話する。
美加「はーい。どうしたの?」
明るい声。その声を聞くだけで癒される。美加はいつも、私に元気をくれる。
私「あー・・・えーっとさ、ちょっとお願いがあるの」
美加「何々?古乃羽お嬢様のお願いなら、何でも聞いてあげるわよ?」
さて、どう言うか・・・確実に誤解されるだろうな。

私「えっとさ、この前の肝試しのときの男の子、雨月君のことだけどさ。あの人、どんな人なのかな」
美加「どんなって・・・。こ…古乃羽!ついに・・・ハートを射止められちゃったの!?」
私「なんか古い表現だね・・・。いやあの、好きとか嫌いとか、そういう訳じゃないんだけど、ちょっと気になって・・・」
あぁ、ダメだ、余計誤解されそう。

美加「なるほど、なるほどねぇ・・・。古乃羽はああいうのが好みかぁ・・・。よし、分かった。美加お姉さんに任せなさい。古乃羽なら絶対大丈夫!うまくいくよ!」
・・・まぁいいか。詳しく説明できないし。それに彼なら別に・・・誤解されて嫌な気もしないかな。

310 :赤緑 ◆kJAS6iN932 :2008/09/04(木) 10:31:47 ID:tHmnyYdo0

11/11
私「ごめんね。私から話しかければ済むことなんだけど・・・」
美加「まさか。古乃羽にそんな真似させないって。ばっちりセッティングしてあげるから、楽しみにしてなさい」
セッティング。また会わせてくれるってことか。気が早いなぁ・・・。

それにしても、美加の中で、私は相当なお嬢様のようだ。
でもそうやってくれるのには、甘えてしまう。
私「うん。ありがとう」
美加「はいはーい。んじゃ、また夜、メールか電話するねー」

電話を切り、携帯を鞄に仕舞う。
目を閉じて考える。
私は大丈夫?大丈夫だ。
もう、負けない。逃げたりしない。

私は立ち上がり、陰から出て、光の下へと向かった。

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